小さいころから病院のお世話になるのが多かったことが、医療の道に繋がりました。不整脈があり、定期的に検査をしていたんです。最新の機器を使って病気と闘う患者さんを助ける仕事に興味を持ち、広島国際大学の診療放射線学科へ。卒業後は東大阪にある病院に入職しました。しかしそのうち、検査を通してではなく、直接患者さんの身体に触れる治療に携わってみたくなったのです。
たとえば患者さんの痛みを取り、日常生活に戻す治療には段階があります。検査をし、診察をし、投薬をし、リハビリをする。そのたびに違う人間が担当することは珍しくありません。けれど柔道整復師は脱臼や捻挫などの判断、整復を自分で行い、自分の力で痛みを和らげ、目の前の患者さんの喜ぶ姿を見ることができる。医者と同じぐらい責任は重いですが、そこがやり甲斐でもあります。
国家資格を取るために、履正社医療スポーツ専門学校の柔道整復学科の夜間部に入学しました。入試の時期やアクセスの良さだけで選びましたが、入学してみると先生との距離の近さやアットホームな雰囲気、年の差を超えて互いに刺激しあえる仲間の存在があり、履正社で学ぶ日々は楽しいものでした。
資格取得のためだけじゃない学びを。
勉強は資格取得のためだけではなく、いろいろなことを観察し、研究して、それを発表するという道もある、と興味を持たせてくれたのも履正社でした。在学中に近畿の柔道整復学会で「レントゲンやCTに関する画像診断の有効性」というテーマで学生として発表をさせてもらいました。学科長の田中雅博先生や、担任だった桃井俊明先生にはお世話になりました。
当時は意識もしていなかったけれど、履正社柔道整復学科の「学生による学会発表」は私が第1号だと聞きました。今でも熱心な学生たちが積極的に学会発表に取り組み、多い時は年に10本前後の発表があるというのもOBとしては頼もしい限りです。柔道整復の世界での履正社のブランドイメージに寄与していると感じます。ここまで学会発表に力を入れている専門学校はほとんど聞かないし、学会参加に関して旅費、宿泊費までバックアップしてくれる。そこが他校との大きな違いです。
履正社を卒業し、接骨院で勤務した当初は独立開業も考えました。でも、個人でやるより組織の中で働く方が自分には向いていると思ったんです。学会での活動がご縁で、宝塚医療大学で臨床研究をしながら教鞭をとる現在のスタイルを選びました。近年、接骨院で取り扱いが可能となった超音波画像観察装置(エコー)を柔道整復師としてどう活用していくかがライフワークのひとつ。自分の発見が柔道整復の世界にプラスになり、人々の健康に繋がる。それが魅力です。
また「エコーといえば立山先生」と声をかけていただき、履正社の非常勤講師として後輩を教えて4年になりました。他校では1~2台あればいいほうのエコー装置が、ここには8台もある。こんなところにも、履正社の進取の精神を感じます。
治療の現場では専門的な知識や経験はもちろんですが、患者さんとの言葉、コミュニケーションはとても大事です。その点では、履正社の学生はみんなきっちりと挨拶ができる。そこは社会に出ても、続けてほしいところです。
現在は大阪大学大学院の博士課程で新しい研究に取り組み、サルコペニア(高齢者の筋力が衰える病気)を防ぐ薬の有効性をマウスでの動物実験で調べています。自分の研究が高齢者の元気、行動力のアップに少しでも繋がればいいと願っています。もともと、勉強はそんなに好きなほうではありませんでした。でも、いろんなことをやってみたかった。研究、臨床、学生への指導、どの仕事も楽しんでいます。その源流には、履正社での日々があったと思います。